映画「DUNE/デューン 砂の惑星 PART2」 ネタバレ考察感想 SF映画史に残る新たな金字塔。救済者を選択したポールの物語

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前作『DUNE 砂の惑星 PART1』公開から2年。遂にPART2が公開になりました!この瞬間を2年間待ち望んでいたました!

公開日が発表された直後に自分のカレンダーにDUNEの日を定め、初日に速攻観てきました。もちろんスクリーンはIMAXレーザーGTです。

映像、構成、音楽、美術、衣装、アクション、VFX、画面から出てくる全てのクオリティが凄まじかったです。期待していた10倍の面白さでした!!これだけ期待値が上がっていて、その期待をさらに大きく超えてくる映画なんてそうそうないですよね。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の才能に脱帽です。それでは、SF映画の新たな金字塔となるであろう『DUNE PART2』の考察感想を書いていきたいと思います。

前作の考察感想はこちらから見られるので、復習代わりに読んでみてください!


鑑賞オススメ点数・・・100点

あらすじ

砂の惑星デューンをめぐるアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な宇宙戦争が勃発!ハルコンネン家の策略により、アトレイデス家は全滅。しかし、最愛の父と全てを失うも、後継者ポールは生きていた。ポールは愛する砂漠の民チャニと心を通わせ、その絆は、彼を救世主としての運命に導いていく。一方で、ハルコンネン家は宇宙を統べる皇帝と連携し、その力を増していく。そして、遂に復讐の時。未来の希望を取り戻すため、ポールたちの全宇宙を巻き込む最終決戦が始まる。(HPより抜粋)

以下、ネタバレ含みます。

(1)前作を超える洗練された映像体験。超圧巻の撮影

2年前にPART1が公開された時でさえ、SF映画史を塗り替える映像美だと絶賛されていたこのDUNEですが、それを優に超えてきました。存在しないアラキスを想わせる砂漠の美しさ、砂の粒子に飲み込まれてしないそうなほどの臨場感、砂虫との激闘、ハルコンネンの冷徹なモノクロシーンなど、、、ゾクゾクするような映像と音楽の連続に、自然と高揚してしまう自分がいました。

前作では、プロローグ的な立ち位置の内容であることもあって、あえてヴィルヌーヴはスローテンポの作風に仕上げました。

その結果、早い物語展開になれた若い世代には、少し抵抗感があるというコメントも当時は散見されました。スローテンポの映像を3時間観続けることってなかなかないですしね。

ただ、本作では一転、物凄い展開の早さで物語が進んでいきます。DUNE自体の「本編」は、やはりPATR2になるという元からの構成があったのですね。

特に中盤〜後半にかけての復讐劇のスピード感はえげつなかったです。ポールが救世主としての役割を自覚し、覚醒していく。そして民を導いて復讐を仕掛けていく、という後半は何度も観たいくらいの記憶に残るシーンの連続でした。

この展開の早さが本作のまた魅力にも繋がっており、3時間の映画体験が長く感じませんでした。このスピード感を選択したこともPART2の成功に繋がっているような気がします。

(2)豪華なスター俳優たちが魅せる鬼気迫る演技の応酬

物語上、PART2では復讐劇が軸になっているので、全てのシーンで温度感や緊張状態が非常に高い位置で担保されています。

ポール役のティモシー・シャラメを始め、ゼンデイヤ、オースティン・バトラーなど、とてつもない熱量の名演で一瞬も目が離せません。
彼らは本作を演じることで、俳優として1つ上のステージにいったのではないでしょうか。そんな胸が熱くなる演技でした。

私は、小説版『デューン』を読んでいますが、原作ではポールとジェシカが救世主伝説になぞらえて、徐々に恐ろしく、変貌を遂げていく様子が緻密に描かれます。小説なので心理描写が多めなのは当たり前ですが、映画では適切な映画尺に納めるように変貌の様子をガラッと変えるように描かれています。

リサーン・アル=ガイブとして指導者になることを誓ってから、民に恐れられ、狂気に満ちていくティモシーとレベッカ・ファーガソンの演技はハンパじゃなかったです。レベッカの高貴な美貌と、誰にも恐れない迫力ある演技を拝むだけでも本作の価値があるほど。

そして、本作のポールたちを食いかねない裏主人公として存在感を発揮したのが超魅力的な悪役・フェイド=ラウサを演じたオースティン・バトラーです。オスカーを獲得した『エルヴィス』で魅力的な存在感を発揮していましたが、本作ではその存在感が爆発。

オースティン・バトラー演じるフェイド=ラウサ

画面に出てきた時の恐ろしさと美しさ。一瞬でその場の空気感を支配するカリスマ性はオースティンだからこそだと思います。正にフェイド=ラウサに適役でした。このレベルの悪役ってヒース・レジャーが演じたジョーカー以来じゃないかな。

最後にポールとの決闘で敗れて絶命するのが惜しいキャラクターでした。

あと、フェイド=ラウサが、ハルコンネンの決闘場でアトレイデスの生き残りと決闘するシーンはゾクゾクが止まらなかったです。シーンの全ての空気感を支配していました。もうオースティン・バトラーの虜です。

(3)宿命を受け入れるポールの物語。宣伝と宗教の危うさ

『DUNE』という作品を2部作観ると、ポールが自分に課された宿命と重積を受け入れて、救世主になっていく様子を描く成長物語でもあることが分かります。

ポールの人生と血縁はかなり複雑な状況です。アトレイデス家の正統な後継者でありながら、PART2では、ポールがハルコンネン家の血も混ざったアトレイデスとのハーフだという衝撃の事実が明かされます。ジェシカの父親がウラディミール・ハルコンネンということが判明したからです。ポールからすると、ハルコンネン男爵は祖父にあたるのです。

アトレイデスとハルコンネンという、対立する一族の血に挟まれながら、フレメンともこれからの命を共にすることを決意した、かなり数奇な宿命なのです。

アラキスの北側に生息するフレメンの元にポールが駆けつけた時、異常な熱狂でフレメンから迎えられました。中盤から、スティルガーもポールのことを救世主として崇めています。

フレメンの間では古来から、ある外世界から来た救世主が、不遇なフレメンを解放してくれるという伝説がまことしやかに言い伝えられてきたわけです。この外世界からの救世主のことをフレメンは「リサーン・アル=ガイブ」と呼んでいるのです。

アラキスの正統後継者であること、未来が予見できること、カリスマ性を持っていること、言い伝えの予言通りに世界が動くこと、それらの事実からスティルガーたちは、徐々にポールがそのリサーン・アル=ガイブなのだと、確信を持つようになっていくわけです。

しかし、この言い伝えは全てベネ・ゲセリットという秘密結社の計画の一部であることも、教母とレベッカからの告白で分かります。

この事実は、物凄く恐ろしいことです。特定の部族をコントロールするために、ベネ・ゲセリットは嘘の作り話を広め、何百年に渡ってフレメンを信じ込ませてきたのです。
これがフレメンの間では、宗教となり、信仰となり、一族全体のあり方を決定されるものだとしたら?あってはならないことです。

この事を私たちの現実世界に置き換えてみると、おぞましい計画であることの実感が湧きます。私たちと密接に関わっている仏教やキリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教が全て誰かの作り話だったとしたら、世界はどこかたった数人の秘密結社に全て操られ、戦争を意のままにコントロールし、一族を消し去ることも容易にできるのです。

奇しくも、ポールとジェシカはこの作り話の伝説によって命を救われたこともまた、事実です。ポールが最初からリサーン・アル=ガイブだという可能性すら無ければ、別の種族を異常に嫌うフレメンからは逃亡してきた時点で殺されていたのですから。

何が正義で何が悪かわからない、DUNEという物語がいかに複雑で、一面性では語れない奥深い構成になっているかが理解できます。

こういった展開から、宣伝の力と宗教がいかに脆く、危険性を孕んでいるものかも、疑問を提示しているのです。

さらに、途中までリサーン・アル=ガイブであることを拒んでいたポールでしたが、次第に自分の宿命を受け入れ、ベネ・ゲセリットが作った嘘を利用して、フレメンと共に世界の覇権を奪おうと画策します。
ジェシカも飲んだ「命の水」を飲んだことによって、覚醒したポールは未来がはっきりと見えるようになりました。ハッキリと予見できる未来と、言い伝えの通り動くことで、フレメンの心を完全に掴んでしまうのです。

だからこそ、ジェシカはポールに半ば強制的に「命の水」を飲ませたわけですね。ジェシカの狙いは、絶滅したアトレイデスに代わり、世界の覇権を握ろうとしているのです。

ポールは自ら作り話通りに動き、チャニとの約束を絶ってまで、フレメンの救世主となる道を選択します。この物語は、ポールが自らの行動を選択する意思決定の物語でもあるのです。

わずかな期間で、救世主となったポールが次に選択する未来は全世界をも巻き込んだ大規模な戦争。奪われる側から奪う側への挑戦。世界を操ってきたベネ・ゲセリットさえも超越しそうなポールの権力は、一体どこに向かっていくのか。

愛を誓ったチャニが常に不安そうにポールに寄り添い、終盤は睨むようにしてポールを見つめていたのは、愛する人が権力に蝕まれていく様を見て、どうにかして止めたいともがく感情の表れだったのではないでしょうか。

(4)スパイス=石油。現代に繋がる世界大戦前夜

DUNE1の考察では、スパイスは石油のメタファーであるということを提示しました。

なぜなら、『アバター』のジェームズ・キャメロン監督も以下のように言っていることからも明らかです。スパイスが麻薬という考え方も前作ならできそうでしたが、本作の冒頭では「スパイスを制した者が世界を制する」というセリフが出てきます。
麻薬で世界を制することなどできないので、やはりここは石油が正しいと思います。

「著者のフランク・ハーバードはおそらくムジャーヒディーンとソ連に対する彼らの闘争について描いたんだろう。正確な時期はわからないが、19~20世紀に砂漠のアラブ系遊牧民たちがソ連軍と争っていたのは確かだ。(中略)宇宙を舞台としたスパイス争奪戦が描かれているけれど、現実世界で言えば、メランジは石油かな。(中略)砂漠の惑星アラキスの原住民フレメンが、ムジャーヒディーン、つまり今でいうアフガニスタンの軍事的指導者、あるいはテロリスト的存在なんだ。」

「SF映画術」ジェームズ・キャメロン著

このDUNEという作品は、石油を巡って、大国同士が世界の覇権を奪い合う物語だったわけです。

そしてまさに、石油の宝庫であるアラキスは中東の国々をイメージしており、フレメンは中東に住む過激派の部族であると言えます。今で言えば、タリバンあたりのイメージでしょうか。

本作ではさらに、戦争の重要なカギを握る武器として、「核爆弾」が登場します。

密かにアトレイデスが持っていた核爆弾を、アトレイデスのガーニーは隠し持っていました。核をフレメンに渡し、皇帝との戦争でも核を交渉の材料として使います。小国が大国に抗う術は、核を保有することなのです。

この話は現実世界でもまさに今、起こっている話です。ソ連やアメリカなど大国が核を保有する中、小国も負けじと核を持ち始めました。

イスラエルやパキスタン、北朝鮮などの国々です。

このような小国がソ連やアメリカと対等に話し合うためには、核を持つしかない。しかし、見方を変えれば過激な小国が核を持つことで、混沌とした世界が始まってくる。イスラエルなどが、ポールたちのように、核を材料にして世界の覇権を、武力を持って制圧してくると考えたらこれほど恐ろしいことはありません。

悪夢です。

そういったことを、ポールとジェシカはやろうとしているわけで、その未来で何十億人という死者を出すことが見えたポールは最初、リサーン・アル=ガイブとして生きていくことを拒絶したのです。しかし、ポールは覚悟しました。武力によって、世界を奪うことを。

ポールたちが次に狙う、連合国との世界大戦、是非観てみたいものです。

まとめ

DUNEは、異世界のSFスペクタルや愛の物語によって、核心は巧妙に隠されていますが、その作品的本質には石油を巡る世界大戦、宗教対立、信仰の自由、核のあり方、支配構造からの脱却・・・といった数々のテーマが盛り込まれています。

実際はものすごく複雑な物語を、映像の圧倒的クオリティで誰もが楽しめるエンタメに昇華しようと試みたのがヴィルヌーヴです。

本作のラストカットは、チャニがアラキスで砂虫に乗ろうとするところで終了します。チャニの表情は、何かを決意したような顔つき。直前で、生涯の愛を誓ったポールを皇帝の娘に取られたのですから。複雑な想いを秘めているはずです。

実は、デューンの原作には続編が5作出ています。『デューン砂漠の救世主』、『デューン砂丘の子供たち』、『デューン砂漠の神皇帝』、『デューン砂丘の大聖堂』と著者、フランク・ハーバードの死後も息子が代わりに描き続け、シリーズ作品になっていきます。

よって、映画版のPART3が製作される可能性はかなり高いのです。

続編では、チャニのラストカット、そして世界大戦へと次なる戦いを決めたポールの覚悟、この辺りが描かれていくのではないでしょうか。

うーん、早く観たすぎる!!!続編、早く頼む〜!

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